「随筆 砧」(近江書房版)あとがき
遠い南の島のスマトラの、山の奥の宿屋で、先きに泊った人の残していったらしい
「砧」を見つけ、ふるさとなつかしく読み明かしたといふたよりを頂いた事があった。
私が織物に趣味を持っているらしいとて、異国の織柄の事こまごまと書いてくださった
方もあった。平和の日がかへってきて、ふたたびこの書を世に出すにつけ、まだ見ぬ
それ等の方々の消息を知りたい思ひが切である。「砧」は以前のものとは装丁も違ひ、
内容も大分制限されたが、これはこれとして新しく読んで頂きたい気持である。
昭和二十二年初冬
鎌倉山にて 著者
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