鳥籠

寶文館
大正十四年六月十日初版発行 昭和四年五月二十日第十版発行


序にかへて

 若い人達のために、私はこの第四の短篇集を編んでみた。
 幼き日から若き日へかけて、誰しもそこには無邪氣な夢と純な感傷に充ちた懷しい追憶の幾つかを持つに違ひない。ここに集められた九篇は、いづれもさう云ふ追憶の日の心の影を物語るやうな作品ばかりで、「鳥籠」は三田文學に、續く五篇は婦人雜誌に、終りの3篇は少女雜誌に寄せたものである。幼き日は過ぎやすい。若き日は更に過ぎやすい。今、さう云ふ日日に生きつつある若い人達の胸に、この貧しい短篇集が何物かを與へ得るならば、それこそ私にとつてはこの上なき歡びである。
 大正十四年初夏

著 者


目次
鳥籠(十二年十二月作)
鳶色の瞳(十二年十一月作)
かみなり(十二年六月作)
藤の花(十年八月作)
鏡(十二年十一月作)
芳子(八年八月作)
若葉の匂ふ頃(九年四月作)
友の形見(十二年四月作)
白蘭花(十三年九月作)

装幀:蕗谷虹兒


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