封書(越知二郎宛)

【表面】松山市業平町三六 竹花横丁 越知二郎様
【裏面】岩代須賀川 服部てい子 二月廿五日


格別用もなかつたので店に出ておはじきのなかまにはいつてみました。小さい甥達は面白がつてなか/\寝るといはないのを今やつとねかしつけたところ、八時をすぎてゐます。今日は浴びるにいゝかげんの日が縁のあたりにさして風も至極おだやかでした。この分で進んでいけばよいがまた手のしらをかへしたやうに寒むくなつてくるのでせうよ。
先日お手紙のついた日はかなりの雪降りでした、しかも吹雪で……。
それがまだ解けきらず屋根の片側道の隅などに残つてゐます。今日あたり道はまるでお汁粉のやう、ころんだが最後あんころ餅です。
行く家々の火鉢の上に福寿草を見る位ゐのもの 梅などはまだ/\なか/\見られません。
つばな、げんげ まぞ名にこそきいてゐましたが、私はどんなのかしらないんですよ。ここらにありませんからねえ。蓮華草すらこの近辺にはありません。一里二里在方にゆかなければね。
恐らくれんげ草なぞこの町の人で知つてゐる人はないといつてもいゝ位ですよ。すみれたんぽゝは咲きますけども。
ほんに早く花さく頃になればいゝこと。
どこへでも遊びにゆく約束をするのが私のくせでしけども さすがに伊予ときてはまつたにお約束もできませんね。いつか東京でお目にかゝりませう、遠いんですものね。
足のしもやけが無暗に痛くて痒ゆい。少し用もあるしすから(ママ)今晩はこれで。さよなら
  二月廿五日夜 

てい


 二郎さん


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