封書(川浪ていより服部けさ宛書簡)

【封筒表】群馬県草津町 コンウォール・リー様方 服部 けさ様
【封筒裏】東京神田駿河台鈴木町 大野館 川浪 てい


其後はどうお暮しですか、馴れない寒さにお
困りではありませんか。私も暮れからお正月に
かけて寒さに負けた気味でいろ/\ぐあいがわ
るかったけれど、この頃になって起きてゐます。
寒い間だけ茅ケ崎にでも行かうと思って随
分貸間を探したけれど、思ふやうなのがなくて
あきらめました。例年よりは避寒客が多い
のでなか/\空屋や貸間がないんださうです。
それからいっそ家を持たうと思って随分方々
の郊外を探してますけどなか/\ありません。
よさヽうな家といふよりも、第一には何處にも空
いた家がないのです、物価はます/\高くなるし
家はなし、吾々のやうな貧乏人は今にどうなる
世の中やら。また二三日のうちに大崎にでも
いかうと思ってます。暮れからずっとこっちに
ゐましたけれど。
須賀川の家に盗人がはいったのですってね、そ
れでもお金ですんでよかったと思ってます。少
し夢見がわるかったものだから気にしてたの

ですけれど。
此間●●ちゃんが手紙をよこしましてね、けいちゃ
んがちっとも手紙をくれないって不平をいって
ましたよ・淋しいって、年始状も貰へなかった
って、そして私から手紙をくれるやうに言って
くれっていふんです、そして今朝また二度目の
を寄越して、けいちゃんからたよりがないうちは私
が怠けてさういってやらないんだと思ってるって。
この頃ばあちゃんが悪いさうですね、もう今度
は駄目なのかも知れません。
造作なく一月も暮れました。これからの空っ風
を我慢してるうちにはそろ/\あたヽかになっ
てくるでせう、それではお大切に。
三上さんによろしく。
  一月三十一日

てい

  けさ様

【注】判読出来ない文字は●で示されています。


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