(仮題)談話會第一回總會の報告

「少女界」第參巻第十二號 明治37(1904)年12月
本資料は、石井由美子さんにご提供いただきました。

樂しい/\私等の談話會第一回總會は開かれました紅葉にてりそふ旭ケ丘に先づ會員十四名式の終ると共に連れだって[#原文では「連れだてっ」]會塲に至りました心も赤き毛布に座してさて見廻すとあたりの木々漸く紅葉し初めて川の面をなでゝ來た風に松の木にかけてある白幕がヒイラヒラ近い西袋村の水車の音も丁度私等によろこびを述べて居るようやがて服部貞子の開會の辭終れば皆々起立して今日を祝ふ君が代の二唱續いて樂しき今日のまどゐかな……と歌ひ出でました時におてんとう樣はニコ/\と此席にのぞまれましたそれから役員の改選その結果は會長服部貞子、副會長根本松江、幹事武藤たみ子、渡邊とみ子、それを報告最中に今日および申した永田先生のお出で皆々よろこびのうちに携へのおべんとうが開かれましたとかうするうちに寫眞師がきましたので直に撮影まぶしくて/\正面が見られないので皆横を向いて大分これにひまを取つてすぐに談話服部貞子の空想、根本松江の眞の日本婦人、先生は會に向つての希望に働きある婦人たるべし輕々しくものを信ずべからずなど色々有益なお話し遊ばし約束の宴會へとておかへり仕方なくて一同お見送り申上げましたお姿の小さく/\なるまでそれから會員の談話それが終つて茶話何誰かのお話しがお可笑しいので思はず口のおせんべいをふき出したりそのうちにテニスが初まつてボールが大變いそがしそう海老茶の袴がひらひたりつぼんだり午後四時の閉會ラツケツト片手に殘り惜しさを芝生にとゞめてみかへり/\たちかへりました跡には紅葉の幾ひらが……時はこれ明治卅七年の菊の香多き天長節(岩代須賀川町服部貞子報)


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