テオドール・シュトルム


Theodor Storm (1817-1888)


皆さんは、シュトルムの小説を読まれたことがありますか?
以前、どなたかの書かれた文庫本の解説によると、 旧制高校生の必読書であったようですが(ドイツ語のテキストに用いられた)、 残念ながら昨今ほとんど出版されていないようです*。そういった意味では、 偏奇館の住民となる資格が十分あります。
私は大学生時代にかなりのめりこんで、古本屋で一所懸命に探したものです。 意外に沢山の種類の文庫本が、以前は出版されていたようです。 しまいには、読めもしないのにドイツ語の全集まで買ってしまいました。
そうした中、84年9月に村松書館からシュトルム全集の刊行が開始されまして、 狂喜乱舞いたしました。「これでドイツ語以外で全集が読める!」と。
ところが、その第一回配本の第二巻(3900円<まだ消費税のない頃>) 刊行以来久しく発行されませんでした。
はらはらしておりましたところ、忘れた頃の94年9月に第三巻が、 95年10月には第一巻が発行されていました(いずれも8240円<消費税込み>)。
いやー、世の中には息の長い出版もあるものだと、村松書館の根性に敬服するというか、 なんというか。次回配本は、昨年9月だったのですが、やはり出ませんでした(^^;)。
10年の間に、値段もずいぶん変わりました。

シュトルムの小説で一番有名なのは、おそらく「みずうみ」でしょう (インメン湖、インメンゼーとも表記される)。
主人公ラインハルトと幼なじみの少女エリーザベトとの淡い恋心の芽生えと進学のための別離。 そして、主人公が社会人になる前に、少女は、やはり彼の旧知の友人と結婚してしまう。 何年かたって、彼は夫妻を訪ねるが、依然として抱き続ける恋心にいたたまれず、 もう二度と会うまいと決意して別れる。
雑な紹介で申し訳ありませんが、こうしたことが老人の回想として 書かれています。これはシュトルムの小説のだいたいのパターンでもあります。 一読されれば、そのロマンチックな内容にうっとりするか、拒否反応を起こすでしょう。 私は、うっとりした方ですが ( ^ ^ ;。

詩人立原道造は旧制一高時代に習った「インメンゼー」に感激して、後に 「萱草(わすれぐさ)に寄す」というシュトルムの影響の強い 叙情詩集を出しており、その冒頭の詩「はじめてのものに」の最後にエリーザベトの名が 出てくるそうです。 彼は、軽井沢で知り合った女性をエリーザベトとかエリザと呼んでいたらしい。
もっと詳しく知りたい方には、人と思想103「シュトルム」(清水書院刊)をお勧めします。


*現在岩波文庫からは、「みずうみ 他4編」だけが出版されています。

参考になるかどうかわかりませんが、私の持っている文庫本のリストです

シュトルムの本が読みたい!という方は、こちらの本屋さんの独文学のページが便利です。 リンクをご了承いただき、ありがとうございます。

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シュトルム関係ホームページへのリンク

HUSUM: Theodor Storm Homepage(ドイツ語)

Projekt Gutenberg-DE(ドイツ語)

「みずうみ」をはじめ、14編のドイツ語の電子テキストが読めます(1999年3月現在)。